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代表的な呼吸器疾患

気管支喘息(きかんしぜんそく)

気管支喘息は、空気の通り道である「気道」に慢性的な炎症が起きることで、気道が狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。発作がない時は元気に過ごせるため軽く見られがちですが、体の中では炎症が続いていることが多く、放置すると悪化・重症化する可能性があります。

一方で、本来喘息ではないにもかかわらず、以前に医療機関で「喘息かもしれない」と言われたことで、自分自身が喘息であると思ってしまっている方も多く居ます。喘息患者さんには使える薬も限定されることがあり、自身が喘息であるかどうかを正確に確認することは重要です。

気管支喘息の主な原因・悪化因子

気管支喘息は、体質に加え、さまざまな刺激が引き金となって発症・悪化します。

  • ダニ、ハウスダスト、花粉、カビ
  • ペットの毛やフケ
  • 風邪などの感染症
  • ストレス、疲労、睡眠不足
  • 運動、冷たい空気、天候や気圧の変化
  • 喫煙(本人が吸う能動喫煙)
  • 受動喫煙(周囲のタバコの煙)

特に喫煙は、喘息を悪化させる明確な原因です。薬の効きが悪くなり、発作が増えることもあるため、喘息のある方には禁煙が強く勧められます。

よく見られる症状

気管支喘息の症状には、次のような特徴があります。

  • ゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)
  • 息を吐くときの苦しさ
  • 咳が続く、特に夜間や明け方
  • 胸が締めつけられる感じ、深呼吸のしづらさ

夜中から早朝に症状が出る・悪化するのは、喘息を疑う重要なサインです。

気管支喘息の検査

症状だけで判断せず、検査を組み合わせて診断します。

  • 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
    → 気道の狭さや息の出しにくさを評価
  • 呼気一酸化窒素(FeNO)検査
    → 気道のアレルギー性炎症の程度を数値で確認
  • 血液検査
    → アレルギー体質や原因を調べます

これにより、咳喘息やCOPDなど似た症状の病気との区別を行います。

気管支喘息の治療

治療の基本は、気道の炎症を抑え、発作を起こしにくくすることです。
中心となるのは吸入ステロイド薬です。
吸入薬は肺に直接作用するため、内服薬に比べて副作用が少なく、安全性の高い治療とされています。症状がない時期も継続することで、発作の予防につながります。

重症の場合の治療について

症状が強い場合や、吸入薬だけでは十分にコントロールできない場合には、

  • 内服薬
  • 注射薬(生物学的製剤など)

を追加することもあります。これらは、喘息の炎症をよりピンポイントで抑える治療で、重症喘息の方に効果が期待されます。

治療を続けるうえで大切なこと

気管支喘息は、症状が良くなっても自己判断で治療を中断しないことが重要です。

  • 吸入薬を正しく使う
  • 症状が落ち着いていても定期的に受診する
  • 夜間の咳や息切れを見逃さない

適切な治療を続けることで、仕事や運動、日常生活をほぼ制限なく送ることが可能になります。

受診をおすすめする症状

  • 夜中や明け方に咳や息苦しさがある
  • 風邪のあと、咳だけが長く続いている
  • 運動時に息が苦しくなる
  • 季節の変わり目に症状が出やすい

「体力の問題」「年齢のせい」と決めつけず、早めに呼吸器内科へご相談ください。

咳喘息(せきぜんそく)・アトピー咳嗽(がいそう)

「風邪は治ったはずなのに、咳だけがいつまでも続く」
このような症状の背景として、咳喘息(せきぜんそく)やアトピー咳嗽(がいそう)が隠れているケースが多く見られます。

これらは周囲からは重症に見えにくい一方、放置すると症状が長期化したり、日常生活に支障をきたしたりすることもある呼吸器疾患です。いずれも「ゼーゼー・ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)を伴わず、乾いた咳だけが続く点が特徴です。

一般的に、咳喘息の診断目安は「8週間以上続く咳」とされることが多いですが、実際には3週間以上咳が続く段階で、一度医療機関を受診し、適切な評価を受けることが推奨されます。特に咳喘息は、適切な治療を行わずに放置すると、本格的な「気管支喘息」へ移行するリスクがあるため注意が必要です。

主な原因・悪化因子

咳喘息・アトピー咳嗽では、気道が刺激に対して過敏な状態になっています。そのため、日常生活の中のささいな刺激が咳の引き金になります。

  • 風邪をひいた後
  • 冷たい空気、エアコンの風
  • 会話や笑ったとき
  • タバコの煙(能動喫煙・受動喫煙)
  • ホコリ、香水、排気ガスなどの刺激

「特定の場面で咳が出る」という自覚は、診断の大きなヒントになります。

よく見られる症状

症状の出方には共通した特徴があります。

  • 乾いた咳が続く
  • 夜間や明け方に咳が悪化する
  • 横になると咳き込みやすい
  • 会話中や電話中に咳が止まらなくなる
  • 運動後に咳が出る

発熱や膿性の痰がなくても、気道の病気が隠れていることがあります。

咳喘息とアトピー咳嗽の違い

症状は似ていますが、病態と治療方針は異なります。

  • 咳喘息
  • 気道の炎症が関与
  • 喘息の前段階と考えられることがある
  • アトピー咳嗽
  • アレルギー体質が背景
  • 気道の知覚過敏が主な原因

そのため、治療の考え方にも優先順位の違いがあります。

検査について

長引く咳では、まず重大な病気を除外することが重要です。

  • 呼吸機能検査
  • 呼気一酸化窒素(FeNO)検査
  • 胸部レントゲン
  • 血液検査

これらを組み合わせて、肺がん・結核・肺炎など同様の症状を呈する可能性がある多の疾患を否定したうえで診断します。

治療方法

原因に応じて、薬を使い分けます。

咳喘息の場合

気道の炎症を抑えることが治療の中心となるため、

  • 吸入ステロイド薬
  • 必要に応じて気管支拡張薬

を使用します。

アトピー咳嗽の場合

まずはアレルギー反応を抑えることが重要で

  • 抗ヒスタミン薬が第一選択

となります。効果が不十分な場合に、吸入ステロイド薬を追加します。

放置するとどうなる?

咳喘息を放置すると、

  • 咳が慢性化する
  • 本格的な気管支喘息へ移行する

といったリスクがあります。
「もう少し様子を見よう」を繰り返すほど、治療期間が長引くこともあります。

受診をおすすめするサイン

次のような症状があれば、早めに呼吸器内科へご相談ください。

  • 咳が3週間以上続いている
  • 夜間や明け方に咳で目が覚める
  • 風邪が治ったのに咳だけ残っている
  • 市販薬で改善しない

咳は体からの大切なサインです。
我慢せず、早めの受診をおすすめします。

肺炎(はいえん)

肺炎は、初期症状が風邪とよく似ているため、「少し長引く風邪かな」と見過ごされやすい病気です。しかし実際には、適切な治療が遅れると重症化するリスクを伴うため、決して軽視できない疾患です。特にご高齢の方や基礎疾患(持病)のある方は、早期の診断と速やかな治療開始が非常に重要となります。
そもそも肺炎とは、肺の奥にある「肺胞(はいほう)」という小さな袋状の組織に炎症が起こる病気の総称です。その原因は多岐にわたり、細菌やウイルスによるもののほか、真菌(カビ)や薬剤が原因で起こるものもあります。原因により症状の重症度は異なりますが肺炎が起こると酸素の取り込みがスムーズにいかなくなります。その結果、激しい咳や痰、発熱に加え、息切れや呼吸の苦しさといった症状が現れるのが特徴です。

肺炎の主な原因

感染性肺炎の原因は一つではなく、年齢や体調によって異なります。
代表的な原因として、次のようなものがあります。

  • 肺炎球菌などの細菌
  • インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなど
  • 食べ物や唾液が誤って気道に入る誤嚥(ごえん)

特に高齢の方では、飲み込む力の低下により起こる誤嚥性肺炎が多く、はっきりした発熱が出ないこともあります。

肺炎でよく見られる症状

肺炎の症状は人によってさまざまですが、次のような症状が組み合わさって現れることが多いです。

  • 38℃以上の発熱
  • 咳や痰(黄色や緑色になることがある)
  • 息切れ、呼吸が浅く速くなる
  • 胸の痛み
  • 全身のだるさ、食欲低下

高齢者の場合は、

  • 元気がない
  • 食事量が減る
  • 反応が鈍くなるなど、

など、肺炎とは気づきにくい変化だけが現れることもあります。

風邪と肺炎の違い

風邪と肺炎は、似ているようで性質が異なります。

  • 風邪:鼻やのどが中心で、自然に回復することが多い
  • 肺炎:肺そのものの炎症で、治療しないと悪化する

咳が強くなってきた、熱が下がらない、息苦しさが出てきた、
こうした変化は肺炎を疑うサインです。

肺炎の検査

肺炎が疑われる場合は、症状だけで判断せず、検査で状態を確認します。
主に行われる検査は以下の通りです。

  • 胸部レントゲン検査
  • 必要に応じて胸部CT
  • 血液検査(炎症反応の確認)
  • 痰の検査(原因菌の特定)

これらの検査結果をもとに、肺炎かどうか、重症度はどの程度かを評価します。

肺炎の治療方法

肺炎の治療は、原因と重症度に応じて行います。
細菌性肺炎の場合は、原因菌に合わせた抗菌薬(抗生剤)を使用します。
ウイルス性肺炎の場合は、安静や水分補給などの対症療法が中心となります。
症状が軽ければ外来治療が可能ですが、重症の場合には酸素投与や点滴による抗生剤の投与が必要となり、入院治療を要します。診察で入院が必要と判断したら、速やかに連携病院をご紹介します。

肺炎を放置するとどうなる?

肺炎を放置すると炎症が広がり、

  • 呼吸不全
  • 症状の急激な悪化
  • 肺膿瘍や膿胸、縦隔炎などより重篤な病態
  • 高齢者では命に関わる状態

に進行することがあります。
「そのうち良くなるだろう」と様子を見るのは危険です。

肺炎で早めの受診が必要な症状

次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 高熱が続いている
  • 咳や痰が悪化している
  • 息切れや呼吸の苦しさがある
  • 胸の痛みを感じる
  • 高齢の方で、元気や食欲が明らかに低下している

肺炎は、早期に発見し、適切に治療すれば回復が期待できる病気です。気になる症状があれば、我慢せずにご相談ください。

肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患)

肺気腫・COPDは、長年の生活習慣の影響が積み重なって起こる呼吸器の病気です。初期には目立った症状が少ないため、「年齢のせい」「体力の低下」と見過ごされがちですが、実際には早い段階から対応することで進行を抑えられる病気です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、気道や肺胞が慢性的に障害されることで、空気を十分に吐き出せなくなり、呼吸がしづらくなる病気です。肺気腫はCOPDの代表的な病態で、肺胞が壊れることにより、酸素を取り込む能力が低下します。一度壊れた肺の構造は元に戻らないため、症状が軽いうちに診断し、進行を抑えることが非常に重要です。

肺気腫・COPDの主な原因

肺気腫・COPDの原因として最も重要なのが喫煙です。日本では、COPD患者さんの多くに喫煙歴があり、約9割が現在または過去に喫煙していたとされています。
具体的には、次のような要因が関係します。

  • 喫煙(最も重要な原因)
  • 長期間にわたる受動喫煙
  • 粉塵や有害物質を吸い込む職業環境

現在は禁煙していても、過去の喫煙が影響して発症することがある点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。

肺気腫・COPDでよく見られる症状

COPDの症状は、少しずつ進行するため、自分では気づきにくいことが多いです。
しかし、日常生活の中に次のような変化が現れます。

  • 階段や坂道で息切れしやすくなる
  • 歩くスピードが自然と遅くなる
  • 咳や痰が長期間続く
  • 風邪をひくと治るまでに時間がかかる

「以前と比べてどうか」という視点が、早期発見の手がかりになります。

喘息との違い

COPDは喘息と混同されることがありますが、性質は異なります。

  • 喘息:気道の炎症が主で、治療により改善が期待できる
  • COPD:肺そのものが障害され、進行性である

両者が合併することもあるため、正確な診断と適切な治療選択が重要です。

肺気腫・COPDの検査

COPDの診断には、症状の聞き取りに加え、検査による評価が欠かせません。
主に次のような検査を行います。

  • 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
  • 肺年齢の測定
  • 胸部レントゲン検査
  • 胸部CT検査

これらをもとに、COPDかどうか、どの程度進行しているかを判断します。

肺気腫・COPDの治療

肺気腫・COPDは、完全に元に戻すことは難しい病気です。そのため治療の目的は、症状を和らげ、進行を抑え、生活の質を保つことにあります。
治療の基本は次の通りです。

  • 禁煙(最も重要な治療)
  • 気管支拡張薬(吸入薬)による呼吸の改善
  • 必要に応じた吸入ステロイド薬の併用

また、COPDでは感染症をきっかけに症状が急激に悪化することがあるため、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種が推奨されます。
重症の場合には、

  • 在宅酸素療法
  • 呼吸リハビリテーション

を行い、日常生活を支えます。

肺気腫・COPDを放置すると

治療を行わずに放置すると、病気は徐々に進行し、

  • 息切れが日常生活に大きく影響する
  • 外出や運動が困難になる
  • 常に酸素を吸っていないと生活できなくなる
  • 呼吸不全に至る

といった状態になることがあります。

肺気腫・COPDで受診をおすすめする症状

次のような症状がある方は、早めにご相談ください。

  • 階段や坂道で強い息切れを感じる
  • 咳や痰が何か月も続いている
  • 喫煙歴があり、体力低下を感じる
  • 風邪が治りにくくなった
  • 上記の症状に加え、体重減少が見られる

COPDは、早く見つけて対策を始めるほど、その後の生活の質が守られます。「年齢のせい」と決めつけず、早めの受診をおすすめします。

肺結核(はいけっかく)

肺結核は、結核菌という細菌が肺に感染することで起こる病気です。結核菌は咳やくしゃみとともに空気中に出て、空気感染するという特徴があります。
ただし、結核菌に触れたからといって、すぐに病気になるわけではありません。多くの場合、体の免疫力によって抑えられ、体調や免疫力が低下したときに発病します。
肺結核は、かつては「怖い病気」という印象が強くありましたが、現在では適切な治療を行えば治癒が期待できる感染症です。一方で、日本では今も発症する方がいるため、正しい知識を持つことが大切な病気でもあります。

肺結核の主な原因・感染経路

肺結核の原因は、結核菌への感染です。ただし、感染の起こり方には特徴があり、日常の短時間の接触で簡単にうつる病気ではありません。
感染リスクが高まるのは、次のような状況です。

  • 咳や痰に含まれる結核菌を吸い込むことによる空気感染
  • 長時間、同じ空間で密接に過ごした場合
  • 免疫力が低下している場合

たとえば、短時間の会話やすれ違い程度では感染しにくい一方で、換気の悪い場所で長時間一緒に過ごすような状況では、感染リスクが高まります。

肺結核でよく見られる症状

肺結核の症状は、数週間から数か月かけてゆっくり進行します。そのため、風邪や疲れと勘違いされやすいのが特徴です。
代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 2週間以上続く咳
  • 痰や血痰
  • 微熱が続く
  • 体のだるさ
  • 寝汗
  • 原因不明の体重減少

これらが重なっている場合は、早めの受診が勧められます。

肺結核の検査

肺結核が疑われる場合は、症状だけで判断せず、複数の検査を組み合わせて診断します。
主に行われる検査は以下の通りです。

  • 胸部レントゲン検査
  • 胸部CT検査
  • 痰の検査(結核菌の確認)
  • 血液検査(IGRA検査など)

これらの結果をもとに、結核かどうか、現在治療が必要な状態かを判断します。

肺結核の治療

肺結核は、現在では薬で治すことができる病気です。治療には一定の期間が必要ですが、以前に比べて治療の負担は軽くなっています。
一般的な治療内容は次の通りです。

  • 3〜4種類の抗結核薬を使用
  • 治療期間は6〜9か月間
  • 毎日、決められた量を確実に服用

最近では、1回で複数の薬をまとめて服用できる合剤も使われており、服薬回数や飲み忘れの負担が軽減されています。
途中で薬を中断すると、再発や耐性菌の原因になるため、医師の指示どおりに治療を続けることが非常に重要です。

肺結核を放置すると

治療を行わずに放置すると、病状は徐々に進行します。その結果、

  • 症状が悪化する
  • 周囲の人へ感染を広げる可能性がある
  • 重症化する

といったリスクが高まります。
そのため、結核と診断された場合は、保健所と連携しながら確実に治療を行います。

肺結核で早めの受診が必要な症状

次のような症状が続く場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 咳が2週間以上続いている
  • 微熱や体のだるさが長引いている
  • 原因なく体重が減っている
  • 血痰が出たことがある

肺結核は、正しく知り、早く対応すれば怖がりすぎる必要のない病気です。気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。

非結核性抗酸菌症(NTM:エヌティーエム)

非結核性抗酸菌症は、近年患者さんが増えている呼吸器の病気です。酸性の環境でも生存できる抗酸菌とうい菌のグループがあり、結核菌もこの抗酸菌グループに属しています。結核菌による肺感染症がいわゆる肺結核であり、結核菌以外の抗酸菌グループの菌の肺感染症が非結核性抗酸菌症となります。結核と同じグループに属する菌によるものですが、性質はまったく異なる別の病気です。
特に、中高年の女性で、これまで大きな持病がない方に見つかるケースが増えています。
非結核性抗酸菌症(NTM)は、結核菌以外の抗酸菌が肺に感染することで起こる病気です。原因となる菌は、土や水回りなど、私たちの身の回りの環境に広く存在しています。
NTMの原因となる抗酸菌には多くの種類がありますが、日本ではMAC(鳥人型アビウム複合体)と呼ばれる菌が約90%を占めるとされています。
また、結核と大きく異なる点として、人から人へは感染しないという特徴があります。
そのため、家族や周囲の人にうつる心配はありません。

非結核性抗酸菌症の主な原因

原因菌は特別な場所にいるわけではなく、日常生活の中に存在しています。そのため、「どこで感染したか分からない」と感じる方も多い病気です。
感染のきっかけとして考えられているものには、次のようなものがあります。

  • 土壌や水回りに存在する菌の吸入
  • シャワーや浴室で発生する水しぶき
  • 加湿器のミスト
  • ガーデニングなどで舞い上がる土ぼこり

ただし、同じ環境にいても発症する人としない人がいるため、体質や肺の構造、気道の弱さなども関係していると考えられています。

非結核性抗酸菌症でよく見られる症状

NTMは、非常にゆっくり進行するのが特徴です。初期には症状がほとんどなく、健康診断や検診で偶然見つかることもあります。
症状が出る場合には、次のようなものがみられます。

  • 長引く咳
  • 痰が増える
  • 血痰が出ることがある
  • 体のだるさ
  • 体重減少

症状が軽くても、画像検査では変化が少しずつ進んでいることがあります。

肺結核との違い

名前が似ているため不安になる方が多いですが、肺結核とは次の点で明確に異なります。

  • 肺結核:空気感染し、人にうつる
  • NTM:人から人へは感染しない

また、結核は比較的短期間で集中的に治療を行うのに対し、NTMは経過が長く、治療開始のタイミングを慎重に判断する病気です。

非結核性抗酸菌症の検査

NTMが疑われる場合は、画像検査と菌の検査を組み合わせて診断します。
主に行われる検査は次の通りです。

  • 胸部CT検査
  • 痰の検査(2回以上の菌検出が必要)
  • 血液検査

特にCT検査では、NTMに特徴的な肺の変化を確認します。

非結核性抗酸菌症の治療

NTMの治療は、すべての患者さんにすぐ薬を始めるわけではありません。症状の強さや進行の速さを見ながら、治療開始の時期を判断します。
症状が軽く、進行がゆっくりな場合には、定期的な検査を行いながら経過観察とすることも多くあります。
治療が必要と判断された場合には、

  • 複数の抗菌薬を組み合わせて使用
  • 治療期間は1年以上に及ぶこともある

など、長期治療になるのが特徴です。
抗菌薬で改善しない場合は、外科的切除が必要となることもあります。
抗菌薬によってNTMが改善しても、免疫力の低下などにより再燃も生じ得ます。そのため、治療後も定期的にレントゲンやCTにて経過観察が必要になります。

日常生活で気をつけたいポイント(予防の工夫)

NTMは完全に防ぐことは難しいものの、日常生活で意識できるポイントもあります。

  • 加湿器はこまめに清掃し、使用後はしっかり乾燥させる
  • 浴槽やシャワーヘッド、水回りを定期的に掃除する
  • 土ぼこりが立つ作業ではマスクを使用する

こうした工夫は、再発や進行を防ぐうえで役立つと考えられています。

非結核性抗酸菌症を放置すると

進行はゆっくりですが、放置すると、

  • 肺の構造が徐々に壊れる
  • 咳や痰が増える
  • 血痰や呼吸機能の低下につながる

ことがあります。
そのため、「今すぐ治療しない=何もしない」ではなく、定期的なフォローが非常に重要です。

非結核性抗酸菌症で受診をおすすめする症状

次のような症状や指摘がある場合は、呼吸器内科での評価をおすすめします。

  • 咳や痰が長く続いている
  • 血痰が出たことがある
  • 健診や検診で肺の異常を指摘された
  • CTで「抗酸菌症の可能性」と言われた

肺非結核性抗酸菌症は、正しく理解し、必要なタイミングで適切に向き合うことが大切な病気であり、呼吸器を専門とする医師による経過観察が重要となります。
不安な点があれば、遠慮なくご相談ください。

間質性肺炎(かんしつせいはいえん)

間質性肺炎は、肺の中で酸素交換を行う肺胞の壁や、その周囲(間質)に炎症や線維化が起こり、肺が徐々に硬くなっていく病気の総称です。肺が硬くなると、空気は吸えても酸素が血液に取り込まれにくくなり、動いたときの息切れや、呼吸のしづらさとして症状が現れます。
間質性肺炎は、「肺炎」という名前から細菌感染の病気を想像されがちですが、実際には性質も経過も大きく異なる呼吸器疾患の総称です。一般的な細菌性肺炎のように抗生剤で治る病気ではなく、慢性的に経過し、長期的な管理が必要となることが多い点が特徴です。ゆっくり進行することが多く、早期に気づき、継続的に管理することが非常に重要な病気です。

間質性肺炎の主な原因

間質性肺炎にはさまざまな原因があり、詳しく調べてもはっきり特定できないケースも少なくありません。
代表的な原因として、次のようなものがあります。

  • 膠原病などの自己免疫疾患に伴うもの
  • 特定の粉塵や有害物質を長期間吸い込むことによるもの
  • 薬剤の副作用として起こるもの
  • 原因が特定できないタイプ(特発性間質性肺炎)

このように、原因が一つに絞れない病型が存在することも、間質性肺炎の特徴です。

間質性肺炎でよく見られる症状

症状は数か月〜数年かけてゆっくり進行することが多く、初期には「年齢のせい」「体力が落ちただけ」と見過ごされやすい傾向があります。
よくみられる症状には、次のようなものがあります。

  • 動いたときの息切れ
  • 乾いた咳(コンコンという咳)
  • 疲れやすさ
  • 進行すると、安静時にも息苦しさを感じる

特に「以前より階段がつらくなった」「歩く距離が短くなった」といった変化は、重要なサインです。

間質性肺炎の検査

間質性肺炎が疑われる場合は、症状の聞き取りに加え、画像検査を中心として総合的に評価します。
主に行われる検査は次の通りです。

  • 胸部CT
  • 血液検査(KL-6、SP-Dなど)
  • 呼吸機能検査
  • 必要に応じて肺生検

近年は診断基準の改訂(2024年)により、CT画像を中心に診断できるケースが増え、以前よりも侵襲的な検査(肺生検)を行わずに診断できる場合が多くなっています。

間質性肺炎の治療

治療方針は、原因や病型、進行の速さによって異なります。そのため、すべての患者さんに同じ治療を行うわけではありません。
一般的に用いられる治療には、次のようなものがあります。

  • 炎症を抑えるためのステロイド薬
  • 免疫の働きを調整する免疫抑制薬
  • 抗線維化薬(※特発性肺線維症〈IPF〉など、一部の病型で保険適用)

抗線維化薬は、すべての間質性肺炎に必須というわけではなく、病型を見極めたうえで適応が判断されます。
進行して酸素が不足する場合には、在宅酸素療法を行いながら生活を続けることもあります。
間質性肺炎は細菌感染や手術など侵襲が加わることで急激に増悪することがあります。間質性肺炎急性増悪時に治療が遅れると致死的となる場合があります。診察にて入院加療が必要と判断したら、速やかに連携病院をご紹介します。

間質性肺炎を放置すると

適切な管理を行わずに放置すると、肺の線維化が進み、

  • 息切れが日常生活に大きく影響する
  • 常に酸素が必要になる
  • 急激に症状が悪化する「急性増悪」を起こす

といった状態に至ることがあります。
そのため、症状が軽くても、定期的な通院と検査による経過観察が極めて重要です。

間質性肺炎で早めの受診が必要な症状

次のような症状や指摘がある場合は、早めに呼吸器内科を受診してください。

  • 少し動いただけで息切れするようになった
  • 乾いた咳が長く続いている
  • 胸部レントゲンやCTで異常を指摘された
  • 膠原病があり、呼吸の変化を感じている

間質性肺炎は、早く気づき、正しく管理することで経過をコントロールしやすくなる病気です。気になる症状があれば、遠慮なくご相談ください。

肺がん

肺がんは、肺の中にある細胞ががん化し、制御されずに増殖することで起こる病気です。
肺は痛みを感じにくい臓器のため、初期の肺がんでは自覚症状がほとんどないことが多く、検診や別の病気の検査中に偶然見つかることも少なくありません。
肺がんは、日本では大腸癌に次いで2番目に多いがんで、決して珍しい病気ではありません。
一方で、医療の進歩により、早期に見つかれば治癒を目指せる時代になっています。
大切なのは、「怖がりすぎないこと」と「放置しないこと」です。

肺がんの主な原因・リスク因子

肺がんの発症には、いくつかのリスク因子が関与しています。特に知られているものとして、次のような要素があります。

  • 喫煙(最も大きなリスク因子)
  • 受動喫煙
  • アスベストなどの有害物質への曝露
  • 加齢
  • 遺伝的要因

喫煙歴がある方では発症リスクが高くなりますが、喫煙経験がない方でも肺がんになる可能性がある点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。

肺がんでよく見られる症状

肺がんは、初期には症状が出にくい病気です。そのため、症状が現れたときには、ある程度進行している場合もあります。
進行に伴い、次のような症状がみられることがあります。

  • 咳が長く続く
  • 血痰が出る
  • 息切れ
  • 胸の痛み
  • 声がれ
  • 体重減少、食欲低下

これらの症状が続く場合は、「様子を見る」のではなく、検査を受けることが重要です。
前述した様に症状が現れる前に見つけることが重要です。住民検診や健康診断などのレントゲン写真撮影や、CT検診などをうけることで発見しやすくなります。

肺がんの検査

肺がんは、症状だけで診断することはできません。
画像検査で肺がんを疑い、組織検査にて診断の確定を行います。
画像検査として

  • 胸部レントゲン検査
  • 胸部CT検査
  • PET-CT検査

細胞・組織検査として

  • 喀痰細胞診
  • 気管支鏡検査(組織や細胞の採取)
  • 必要に応じてCTガイド下生検

などがあります。当院では喀痰細胞診以外の組織検査は行えません。
胸部レントゲンやCTにて肺がんが疑われた場合、各病院と連携し診断・治療を適切なタイミングで迅速に行えます。

肺がんの治療

肺がんの治療は、がんの種類(組織型)や進行度によって大きく異なります。そのため、治療は一律ではなく、個別に方針が決められます。
主な治療法として、次のような選択肢があります。

  • 手術
  • 放射線治療
  • 薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)

近年は、がんの遺伝子変異や性質に応じた治療が進歩し、以前よりも治療の選択肢が広がり、治療成績も向上しています。
当院の医師は長年肺がんの第一線で治療を行ってきており、東北に14名しかいない肺癌学会評議員の資格を有している、肺がん治療の専門医です。

肺がんを放置すると

肺がんを治療せずに放置すると、病気は進行し、

  • 呼吸が苦しくなる
  • 他の臓器へ転移する
  • 日常生活に大きな支障が出る
  • 治療が困難となり命に関わる

といった状態につながります。
一方で、早期に発見できれば、手術で根治を目指せるケースも少なくありません。

肺がんで早めの受診・検査が必要なサイン

次のような状況がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

  • 咳や血痰が続いている
  • 原因不明の体重減少がある
  • 胸部レントゲンやCTで異常を指摘された
  • 喫煙歴があり、しばらく検診を受けていない

肺がんは、「気づいたときに、きちんと調べる」ことが最も大切な病気です。不安な点があれば、遠慮せずご相談ください。

自然気胸(しぜんききょう)

自然気胸とは、肺に小さな穴があき、そこから空気が漏れて肺がしぼんでしまう状態を指します。突然、胸の痛みや息苦しさで発症する病気です。
肺は本来、胸の中で風船のように膨らんでいますが、空気が漏れることで十分に膨らめなくなり、その結果、胸の痛みや息苦しさが生じます。若い方に多いイメージがありますが、年配の方にも起こることがあり、背景によって注意点が異なります。一方で、適切に対応すれば回復が期待できる病気でもあります。

自然気胸の主な原因

自然気胸の多くは、肺の表面にできたブラと呼ばれる肺の脆弱な部分が破れることで起こります。
起こりやすい要因として、次のようなものがあります。

  • 背が高く、やせ型の体型
  • 喫煙歴
  • 過去に自然気胸を起こしたことがある
  • 肺の基礎疾患がある

ただし、はっきりした原因が分からないことも多く、誰にでも起こりうる病気です。
気圧の変化などでブラが破綻すると言われており、台風が通過した後などで気胸患者が増加することも起こりえます。

自然気胸でよく見られる症状

自然気胸は、比較的はっきりした症状で発症することが多い病気です。
代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 突然の胸の痛み
  • 息切れ、息苦しさ
  • 深呼吸すると痛む
  • 乾いた咳

症状の強さは、肺のしぼみ具合や背景疾患によって異なります。

危険なサイン(救急受診が必要な状態)

多くの自然気胸は適切に対応できますが、次のような場合は緊急対応が必要です。

  • 胸の痛みや息苦しさが急激に悪化する
  • 安静にしていても息が苦しい
  • 会話がつらいほどの呼吸困難がある
  • 唇や顔色が悪くなる

このような場合は、迷わず救急受診してください。

自然気胸の検査

自然気胸が疑われる場合は、画像検査で状態を確認します。
主に行われる検査は以下の通りです。

  • 胸部レントゲン検査
  • 必要に応じて胸部CT検査

これにより、肺がどの程度しぼんでいるか、原因となるブラの有無を評価します。

自然気胸の治療

治療方法は、肺のしぼみ具合・症状・背景疾患によって決まります。すべての方に手術が必要なわけではありません。
一般的な治療の選択肢は次の通りです。

  • 軽症:安静・経過観察・脱気
  • 中等症以上:胸に管を入れて空気を抜く治療(胸腔ドレナージ)
  • 再発や重症例:手術
  • 上記治療を行っても再発を繰り返す場合には癒着療法を行うこともあります。
    中等症以上の治療が必要と判断したら、連携病院へ速やかにご紹介します。

再発について

自然気胸は、再発しやすい病気としても知られています。特に若い方では、一定の割合で再発がみられます。
再発予防のためには、

  • 禁煙
  • 医師の指示に従った治療とフォロー
  • 必要に応じた手術

が重要です。

自然気胸で早めの受診が必要な症状

次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 突然の胸の痛みが出た
  • 息苦しさを感じる
  • 過去に自然気胸を起こしたことがある
  • 症状が徐々に強くなっている

自然気胸は、放置は危険ですが、適切に対応すれば回復が期待できる病気です。
違和感を覚えたら、我慢せずご相談ください。
これまで他院で気胸の治療を行った患者さんが、胸部の違和感や痛みが生じて気胸の再発かもしれない、と思ったら遠慮なく当院へご相談ください。気胸が再発しているかどうかをまずは確認します。気胸が再発している場合は重症度に応じて治療法を相談します。

胸部レントゲン異常

健康診断や人間ドックで「胸部レントゲンに影があります」「精密検査を受けてください」と言われると、多くの方が強い不安を感じます。
しかし、胸部レントゲン異常=すぐに重大な病気というわけではありません。大切なのは、「どのような影なのか」「次に何を確認するのか」を知ることです。
胸部レントゲン異常とは、肺や心臓、血管、肋骨などに通常とは異なる影や形の変化が見られた状態を指します。
レントゲンはスクリーニング(拾い上げ)に優れた検査ですが、影の正体までは分からないという限界があります。そのため、「異常が疑われる=詳しく調べる必要がある」という意味で、精密検査が勧められます。

胸部レントゲンで指摘されやすい異常のタイプ

レントゲンで見られる「影」にはいくつかの性状があり、その見え方によって考えられる病気もある程度異なります。
代表的なパターンは以下の通りです。

  • 淡い影(すりガラス状・浸潤影)→ 肺炎、炎症、軽度の間質性肺炎など
  • 結節影・しこり状の影→ 良性腫瘍、肺がん、結核、非結核性抗酸菌症など
  • 線状影・網目状の影→ 間質性肺炎、過去の炎症や手術の跡など
  • 左右差や形の変化→ 無気肺、胸水、腫瘍性病変など

これらはあくまで「可能性の目安」であり、確定診断にはCT検査などの精密検査が必要です。

考えられる主な病気

胸部レントゲン異常の背景には、軽いものから注意が必要なものまで、さまざまな原因が含まれます。
代表的には、次のような病気が考えられます。

  • 肺炎や過去の炎症の跡
  • 結核、肺非結核性抗酸菌症
  • 間質性肺炎
  • 肺がん
  • 良性のしこりや影

「異常影=がん」ではないという点は、特に強調しておきたいポイントです。

なぜ精密検査(CT)が必要なのか

胸部レントゲンは平面的な画像のため、影の重なりや体の構造によって判断が難しい場合があります。
胸部CT検査では、

  • 影の正確な位置
  • 大きさや形
  • 内部構造や周囲との関係

を立体的に確認できます。
これにより、緊急性の有無や経過観察でよいかどうかを判断します。

精密検査で「異常なし」となることも多い

精密検査の結果、

  • 異常なし
  • 過去の炎症の跡
  • 治療不要な変化

と判断されるケースも少なくありません。
胸部レントゲンは「見逃さないための検査」なので、念のため指摘されること自体は珍しくないという点は、知っておくと安心です。

放置してはいけないケース

一方で、精密検査を受けずに放置すると、発見が遅れてしまう病気もあります。
特に注意が必要なのは、

  • 影が徐々に大きくなっている・咳、血痰、息切れなどの症状を伴う・喫煙歴がある・過去の画像と比べて変化がある

といった場合です。これらに当てはまるときは、必ず精密検査を受けてください。

医療機関を受診する際の実践的アドバイス

精密検査を受ける際は、次の点を意識すると診察がスムーズになります。

  • 過去の胸部レントゲンやCT画像があれば持参する
  • 健診結果表や紹介状を忘れずに持っていく
  • いつから指摘されているかを把握しておく

特に過去画像との比較は、「変化があるのか」「以前から同じなのか」を判断する重要な材料になります。

胸部レントゲン異常を指摘されたら

胸部レントゲン異常を指摘された場合、最も大切なのは「自己判断しないこと」です。
怖さから放置するより、きちんと調べて「問題ない」と確認すること自体が、大きな安心につながります。

早めの受診をおすすめする状況

次のような場合は、早めに呼吸器内科を受診してください。

  • 健診で胸部レントゲン異常を指摘された
  • 精密検査(CT)を勧められている
  • 咳や血痰、息切れが続いている
  • 過去の画像と比べて変化があると言われた

胸部レントゲン異常は、「不安を煽るための指摘」ではなく、「早く確認するためのサイン」です。落ち着いて、次の一歩を踏み出しましょう。